HSRPとVRRP

HSRPとは

HSRP(Hot Standby Router Protocol)は、ネットワークの冗長性を提供するためのプロトコルです。通常、ホストは単一のデフォルトゲートウェイを使用しますが、HSRPを利用すると、仮想IPアドレスをデフォルトゲートウェイとして設定できます。これにより、ネットワークデバイスに障害が発生しても、スタンバイデバイスが自動的にアクティブになり、トラフィックを継続的に処理できます。HSRPは優先度メカニズムを用いて、どのデバイスがアクティブかを決定し、マルチキャストのhelloメッセージを通じてデバイスの状態を監視します。複数のHSRPグループを設定することで、冗長性と負荷分散を最大化できます。

HSRPの主な特徴:

  1. 仮想IPアドレス: HSRPでは、複数のルータが1つの仮想IPアドレスを共有し、この仮想IPアドレスがホストのデフォルトゲートウェイとして設定されます。
  2. アクティブとスタンバイルータ: HSRPグループ内のルータのうち1つが「アクティブルータ」として選ばれ、実際の通信を処理します。もう1つのルータは「スタンバイルータ」として待機し、アクティブルータが障害を検出すると、自動的にスタンバイルータが通信を引き継ぎます。
  3. フェールオーバー: アクティブルータが障害を検出した場合、スタンバイルータがすぐにアクティブルータとして動作を開始し、通信の途絶を最小限に抑えます。
  4. 優先度メカニズム: HSRPでは、各ルータに優先度を設定し、最も高い優先度を持つルータがアクティブルータとして選ばれます。これにより、特定のルータが常にアクティブであることを保証できます。

HSRPバージョン2

HSRP バージョン 2 は、HSRP バージョン 1 の制限を克服するために設計されています。具体的には、ミリ秒単位のタイマーのサポート、グループ番号範囲の拡張(0~4095)、トラブルシューティングの改善、新しいマルチキャストアドレスの導入などが含まれます。また、ジッタータイマーを使用することで、HSRP の信頼性と効率を向上させ、CPUおよびネットワークの負荷を軽減します。HSRP バージョン 2 のパケット形式は、バージョン 1 とは異なり、新しい識別フィールドや拡張された MAC アドレス範囲を持っています。

HSRPのメッセージと状態

HSRP(Hot Standby Router Protocol)で設定されたデバイスは、以下の3種類のマルチキャストメッセージを交換します

Coupスタンバイデバイスがアクティブデバイスの役割を引き継ぐとき
Helloデバイスの優先度と状態を伝達
Resignアクティブデバイスが役割を放棄するとき


デバイスは常に以下のいずれかの状態(アクティブ、スタンバイ、リッスン、学習、Init/Disabled)にあり、syslogを使って重要な状態変化をログに記録します。

Activeパケット転送を行う
init or Disabled準備が整っていない
Learn仮想IPアドレスを学習中
ListenHelloメッセージを受信している
SpeakHelloメッセージを送受信する
Standbyアクティブデバイスに障害が発生した場合に備える

VRRPとは

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、ネットワークの冗長性を提供するためのプロトコルです。主に、複数のルーターが1つの仮想IPアドレスを共有し、ホストに対して単一のデフォルトゲートウェイとして機能するように設計されています。これにより、ルーターの障害が発生した場合でも、他のルーターが自動的にその役割を引き継ぎ、ネットワークの継続的な運用を確保します。

VRRPの主な特徴:

  1. 仮想ルーター: VRRPでは、複数のルーターが1つの仮想ルーターを形成し、その仮想ルーターに仮想IPアドレスが割り当てられます。ホストはこの仮想IPアドレスをデフォルトゲートウェイとして設定します。
  2. マスタールーターとバックアップルーター: 1つのルーターが「マスタールーター」として選ばれ、実際のトラフィックを処理します。他のルーターは「バックアップルーター」として待機し、マスタールーターに障害が発生した場合、自動的に役割を引き継ぎます。
  3. フェールオーバー: マスタールーターがダウンした場合、バックアップルーターが即座にマスタールーターとして昇格し、トラフィックの中断を防ぎます。
  4. 標準化: VRRPはIETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化されており、ベンダーに依存せず、異なるベンダーの機器間でも互換性があります。

HSRPとVRRPの違い

HSRP(Hot Standby Router Protocol)とVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)はどちらもネットワークの冗長性を提供するためのプロトコルですが、いくつかの重要な違いがあります。以下は、HSRPとVRRPの主な違いです。

HSRPVRRP
開発元と標準化Ciscoによって開発され、Cisco独自のプロトコルです。標準化されておらず、基本的にCisco機器にのみ実装されています。IETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化されたプロトコルで、異なるベンダーの機器でも互換性があります。RFC 5798に基づいています。
仮想ルーターの優先順位優先度(デフォルトは100)によってアクティブルーターが選ばれます。優先度が同じ場合は、プライマリIPアドレスが高い方が優先されます。優先度(デフォルトは100)によってマスタールーターが選ばれます。VRRPでは、デフォルトのマスタールーターは仮想IPアドレスを持つルーターです。
プロトコルメッセージHSRPでは、Hello、Coup、Resignの3種類のメッセージが使用されます。Helloメッセージで優先度や状態を伝達します。VRRPでは、単一のVRRPアドバタイズメッセージが定期的に送信され、マスタールーターが生存していることを通知します。
フェールオーバーフェールオーバーが発生すると、スタンバイルーターがアクティブルーターの役割を引き継ぎます。マスタールーターに障害が発生すると、優先度が最も高いバックアップルーターがマスタールーターになります。
認証プレーンテキスト認証とMD5認証の2つの認証方式をサポートします。VRRPも認証機能をサポートしていますが、仕様により異なる実装が可能です。
デフォルトの動作Ciscoデバイスでのデフォルトの冗長プロトコル。マルチベンダー環境での標準的な冗長プロトコル。
仮想IPの所有仮想IPアドレスは、特定のアクティブルーターに割り当てられます。デフォルトでは、仮想IPアドレスを持つルーターがマスタールーターとして機能します。

参考文献

First Hop Redundancy Protocols Configuration Guide
Configuring HSRP
Configuring VRRP