PIM BSRとは
PIM BSR(Bootstrap Router)とは、PIM-SM(Sparse Mode)ネットワークにおいて、RPの選定と配布を自動化するための仕組みです。これは、Auto-RPに似た役割を果たしますが、より標準化されており、Auto-RPの代替として広く使われています。
BSRは、PIM-SMドメイン内でRPを動的に選定し、全ルーターにRP情報を自動配布します。このメカニズムにより、RPを手動で設定する手間が省かれ、RPの冗長性も確保されます。
PIM BSRの動作概要
- Bootstrap Router (BSR)
特定のルーターがBSRとして選出され、ネットワーク内のRP候補(C-RP, Candidate RP)を管理し、その情報をPIMドメイン全体に広めます。BSRは、C-RP情報を集め、適切なRPを選定します。 - Candidate RP (C-RP)
複数のルーターがRP候補として動作します。これらのルーターは、自分自身をRP候補としてBSRにアナウンスし、BSRはそれらの候補の中から最適なRPを選びます。 - RP情報の配布
BSRは、RPの情報をPIMドメイン全体に広報メッセージとして配布します。この情報により、全ルーターがどのRPを使うべきかを知ることができます。
PIM BSRの利点
- 標準化されたプロトコル: Auto-RPとは異なり、PIM BSRはIETFの標準仕様(RFC 5059)で定義されているため、ベンダー間の互換性が高い。
- RPの動的選定: ネットワークトポロジーの変更に応じて、RPの選定や更新が自動で行われる。
- 冗長性とフェイルオーバー: 複数のC-RPを設定することで、RPに障害が発生した場合にも他のRPに自動的にフェイルオーバーが行われる。
PIM BSRの設定
基本構文
1.IPマルチキャストルーティングの有効化
ルータでIPマルチキャストルーティングを有効にします。
Router(config)# ip multicast-routing
2.候補RP(RP Candidate)の設定
RPとして機能するルータで、RP候補を設定します。ip pim rp-candidate コマンドを使用して、RP候補を指定します。
Router(config)# ip pim rp-candidate interface-id [group-list access-list-number]
コマンド 内容 interface-id 候補 RP アドレスとしてアドバタイズされるインターフェイスを指定します。 group-list access-list-number マルチキャストグループを指定。group-list が指定されていない場合、スイッチは すべてのグループの候補 RP になります。
3.BSR(Bootstrap Router)の設定
Router(config)# ip pim bsr-candidate interface-id hash-mask-length [priority]
コマンド 内容 interface-id BSR アドレスが導出されるインターフェイスを入力します 。 hash-mask-length ハッシュ関数が呼び出される前にグループ アドレスと AND 演算されるマスク長を指定。 priority 0 ~ 255 の数値を入力します。優先度の大きい BSR が優先されます。
4.各インターフェースでPIMスパースモードを有効化
マルチキャストルーティングに参加するインターフェースでPIMスパースモードを有効にします。
Router(config)# interface interface-id
Router(config-if)# ip pim sparse-mode
設定例

Router2(config)#ip multicast-routing
Router2(config)#interface range Gi0/1,Gi0/3-4
Router2(config-if-range)#ip pim sparse-mode
Router2(config-if-range)#exit
Router2(config)#interface Loopback 2
Router2(config-if)#ip pim sparse-mode
Router2(config-if)#exit
Router2(config)#ip pim bsr-candidate loopback2
Router3(config)#ip multicast-routing
Router3(config)#interface range Gi0/2,Gi0/4
Router3(config-if-range)#ip pim sparse-mode
Router3(config-if-range)#exit
Router3(config)#interface Loopback 3
Router3(config-if)#ip pim sparse-mode
Router3(config-if)#exit
Router3(config)#access-list 10 permit 239.1.1.1
Router3(config)#ip pim rp-candidate loopback3 group-list 10
Router4(config)#ip multicast-routing
Router4(config)#interface range Gi0/2-3,Gi0/5
Router4(config-if-range)#ip pim sparse-mode
Router4(config-if-range)#exit
Router5(config)#interface Gi0/4
Router5(config-if)#ip igmp join-group 239.1.1.1
設定完了後、マルチキャストアドレスにpingを実行してリプライが返ってきます。

PIM BSRの設定(オプション)
ドメイン境界の定義
大規模なネットワークでは、複数の異なるPIMドメインが存在する場合があります。これらのドメイン間でBSRメッセージをやり取りしたくない場合に、インターフェースに ip pim bsr-border を設定して、ドメインの境界を作ります。
このコマンドは、 スイッチ にこのインターフェイスで PIMv2 BSR メッセージを送受信しないように指示します。
Switch(config)#interface intergace-id
Switch(config-if)#ip pim bsr-border