EIGRP 名前付きモード

EIGRP 名前付きモードとは

EIGRPの名前付きモード(Named Mode)は、EIGRPの設定を従来のクラシックモードよりも柔軟かつ効率的に行うための新しい設定方法です。名前付きモードは、IOS 15.0(1)M以降で導入され、従来の「アドレスファミリー」を使用した設定方法とは異なる方法でEIGRPを設定できます。

名前付きモードの特徴

  1. 単一の構成ポイント: 名前付きモードでは、EIGRPの設定を一箇所で集中管理できます。従来のように異なるコンフィグレーションモードに入る必要がなく、簡潔でわかりやすい設定が可能です。
  2. 構成の簡素化: 名前付きモードでは、IPv4やIPv6、さらにはVRF(Virtual Routing and Forwarding)などの設定を統一して行えます。これにより、設定の重複やミスが減少します。
  3. 容易なポリシーの設定: 名前付きモードでは、ルートポリシーやディストリビュートリストなどの設定を直接、名前付きモード内で行えるため、ポリシーの管理がしやすくなっています。

EIGRPの名前付きモードの設定

名前付きEIGRPには、設定の大部分が完了する3つのモードがあります。

  • アドレス ファミリ コンフィギュレーション モード:(config-router-af)#
  • アドレス ファミリ インターフェイス コンフィギュレーション モード:(config-router-af-interface)#
  • アドレス ファミリ トポロジ コンフィギュレーション モード:(config-router-af-topology)#

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モード

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードへの移行

EIGRPプロセスを開始します。<name> はEIGRPプロセスの任意の名前です。
Router(config)#router eigrp name

特定のアドレスファミリー(IPv4、IPv6)の設定モードに入ります。
Router(config-router)#address-family ipv4/ipv6 unicast/multicast autonomous-system AS-number

AD値の設定

内部および外部EIGRPルートの管理距離(Administrative Distance, AD)を設定します。
Router(config-router-af)#distance eigrp internal-distance external-distance

オプション内容
internal-distanceEIGRP 内部ルート(内部 EIGRP ルート、EIGRP 内で生成されたルート)の管理距離を指定します。デフォルトでは 90 です。
external-distanceEIGRP 外部ルート(EIGRP 外部から学習したルート、例えば再配送されたルート)の管理距離を指定します。デフォルトでは 170 です。

ルーティング対象とするネットワークの指定

EIGRPに含めるネットワークを指定します。このネットワーク範囲内のインターフェースがEIGRPプロセスに参加します。
Router(config-router-af)#network address wildcard-mask

他のモードへの移行

トポロジモードに入り、特定のトポロジに対する詳細設定を行います。
Router(config-router-af)#af-topology topology-name

インターフェースモードに入ります。このモードではインターフェースごとの設定が可能です。
Router(config-router-af)#af-interface interface-id

アドレス ファミリ コンフィギュレーション モードの設定例

「TEST」という名前のEIGRPを作成して、192.168.1.0/24をEIGRPプロセスに参加とする設定例です。

アドレス ファミリ インターフェイス コンフィギュレーション モード

認証の設定

インターフェースにおいてEIGRPパケットの認証方式を指定します。md5hmac-sha-256を選択できます。
Router(config-router-af-interface)#authentication mode {md5 | hmac-sha-256}

認証に使用するキー・チェーンを指定します。キー・チェーンは、事前に設定されている必要があります。
Router(config-router-af-interface)#authentication key-chain key-chain-name

帯域幅の設定

インターフェースの帯域幅を設定します。EIGRPのメトリック計算に影響します。
Router(config-router-af-interface)#bandwidth-percent kilobits

helloパケット送信間隔の設定

EIGRPのHelloパケットを送信する間隔を秒単位で指定します。
Router(config-router-af-interface)#hello-interval seconds

ホールドタイムの設定

ネイバーがダウンと見なされるまでの時間(ホールドタイム)を秒単位で指定します。
Router(config-router-af-interface)#hold-time seconds

スプリットホライズン機能の設定

スプリットホライズン機能を有効または無効にします。通常、スプリットホライズンは有効ですが、特定のシナリオ(例えばハブ&スポークトポロジ)で無効にすることがあります。
Router(config-router-af-interface)#split-horizon {enable | disable}

パッシブモードの設定

インターフェースをパッシブモードに設定するかを選択します。パッシブに設定されたインターフェースは、EIGRPパケットの送受信を行いませんが、ネットワークのアドバタイズは続けます。
Router(config-router-af-interface)#passive-interface {enable | disable}

EIGRPプロセスのシャットダウン

インターフェースをEIGRPからシャットダウンします。インターフェースが再度アクティブになるまで、EIGRPはこのインターフェースを使用しません。
Router(config-router-af-interface)#shutdown

ルート集約

このインターフェースで特定のサマリールートをアドバタイズする場合に使用します。
Router(config-router-af-interface)#summary-address ip-address mask

アドレス ファミリ インターフェイス コンフィギュレーション モードの設定例

認証にmd5、TESTというキーチェインを使用
帯域を1000kb
helloインターバルを1秒、ホールドタイムを3秒
192.168.0.0/16に手動集約してGi0/0から送出する設定

アドレス ファミリ トポロジ コンフィギュレーション モード

AD値の設定

ルーティングの管理距離(Administrative Distance, AD)を設定します。internal-distanceは内部EIGRPルートのADを指定し、external-distanceは外部EIGRPルートのADを指定します。
Router(config-router-af-topology)#distance internal-distance [<external-distance>]

ロードバランシングの設定

負荷分散のために使用する最大パス数を設定します。EIGRPはデフォルトで4つの等コストパスまでを使用しますが、この値を増減させることができます。
Router(config-router-af-topology)#maximum-paths number

不等コスト負荷分散を有効にするためのバリアンス値を設定します。multiplierは、EIGRPが複数の異なるコストのパスを使用するためのしきい値を設定します。
Router(config-router-af-topology)#variance multiplier

EIGRPが負荷分散する際に、トラフィックをどのように共有するかを設定します。balancedはパスコストに基づいてトラフィックを分散し、minは最も低コストのパスのみを使用します。
Router(config-router-af-topology)#traffic-share {balanced | min}

オフセットリストの設定

ルートに追加のメトリックを加えるためのオフセットリストを設定します。このリストは、アクセスリストに基づいてメトリックを調整します。
Router(config-router-af-topology)#offset-list access-list {in | out} offset

ルート保持時間の設定

ルートがアクティブな状態でいられる最大時間を分単位で指定します。この時間を超えると、ルートはルーティングテーブルから削除されます。
Router(config-router-af-topology)#timers active-time minutes

メトリックの設定

特定のサマリールートに対して、カスタムメトリックを設定します。これはサマリールートを使用する際に、EIGRPがそのルートをどう評価するかに影響を与えます。
Router(config-router-af-topology)#summary-metric network mask bandwidth delay reliability load mtu

ルート再配布の設定

他のルーティングプロトコル(例:OSPF、BGP、RIP)からEIGRPにルートを再配布するためのコマンドです。オプションでメトリックを手動設定することも可能です。
Router(config-router-af-topology)#redistribute protocol [metric bandwidth delay reliability load mtu]

アドレス ファミリ トポロジ コンフィギュレーション モードの設定例

ロードバランシングの最大数を「4」、不等コストロードバランシングの値を「2」
ルートがアクティブでいられる時間が60分、負荷分散する際にパスコストに基づいてトラフィックを分散するようにする設定

参考文献

EIGRP 名前付きモードの設定